<今日の表紙>昨年の昨日の日の出の太陽
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最近はずっと日の出の太陽を観ていません。ということで、昨年の昨日のきれいな太陽です。
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昨日の朝日新聞折々のことばで僕がいつもクリスマスイブのブログで吉田純子さんが惜別で書いた音楽評論家の98歳で亡くなった吉田秀和さんの言葉が載っていました。DSC00614


きれいな音であればあるほど、それが何か悲しくひびくのはどうしたわけだろう
    ◇
モーツァルトのクラリネット協奏曲は、響きが「あんまり平静」なので、「明るい長調の光の中で起こる出来事」なので、よけい痛切に響くと、音楽評論家は言う。それに共振するのは、「自分がどこから来たか?」という問い。一度かぎりで消えゆく音。それは〈私〉という存在の寄る辺なさとその寂寥(せきりょう)に、どこか「安らぎ」をすら伴いつつ人を浸すのか。『私の時間』から。

さすがに吉田純子さんが惜別で紹介した人の言葉です。005


その中で吉田秀和さんを次のように紹介しています。
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「僕が長生きしたいとお願いしたわけじゃない」と、とぼけた口調でよく言った。
しかし、今年の4月に花見をした時の吉田さんの風情は、少し違った。

帰り際、ざっと風が吹き、色濃いピンクの花びらが無心に遊ぶ子どもたちに降りそそぐと
「いいねえ」と立ち尽くした。
数分後、ゆっくりときびすを返すと「こういうのはもう、僕には見られないだろうから」。
愛する桜と子どもたち。はちきれんばかりの命が鮮やかにむつみ合う光景に、
原発事故からずっと人知れず抱えていた心の重荷を下ろし、静かにこの世界に別れを
告げていたのかもしれない。

戦争で多くを失い、妻にも先立たれた。悲嘆多き人生に寄り添い、死のその日まで
ペンを握らせたのは、長い歩みの果てにたどりついた悠々たる楽観の境地だった。
戦争や人災を繰り返すのも人間ならば、芸術という美しき精神の結晶を生み出すのも
また人間。諦念(ていねん)を微笑みにかえて、人間というどうしようもない存在を
まるごと肯定した。

「音楽の世界はもうダメだと言う人がいるけれど、音楽はいったい何年の年月を
生き延びてきたの。大丈夫。芸術は、絶対に死なないよ」
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コロナ禍で芸術に触れることがずいぶん制限されているこの頃ですが、そういう異常時を経験して芸術は進化するような気がなんとなくしています。

久しぶりに吉田秀和さんの言葉に触れることが出来ました。

先日から再読していた僕の「老後天国化大作戦」のヒントになった小説「償いの雪が降る」アレン・エスケンス著を昨日読み終えました。DSC08448


最後の部分は涙が自然とあふれ出てきました。やっぱりいい本ですね。表現力豊かな文章に酔わされます。もちろん、訳者の務台夏子さんの表現力も素晴らしいのでしょう。
最後の部分を紹介する前に天国化大作戦の動機になった部分を書きます。

「だが、来世がないということは、この世こそがわれわれの天国だということにもなるんだ。われわれは日々、人生の驚異に囲まれているわけだよ。理解を越える驚異なのに、われわれはそれを当たり前だと思っているんだ。その日、わたしはこの人生を生きることに決めた。ただ存在するだけじゃなく、生きることに。もし死んで向こう側に天国があったなら、それはそれで結構なことじゃないか。だがもし、天国にいるつもりでこの人生を生きず、死後に何もなかったら・・・・・わたしは人生を無駄にしたことになる。全歴史における自分が生きる唯一のチャンスを無駄にしたことになるわけだよ」

事件が解決しての美しいラストの文章です。

表で雪が降りだした。僕たちが店を出るころには、ライラの車にも1インチ、雪が積もっていた。ライラとジェレミーは車に乗り込み、僕は窓ガラスの雪を落とすため外に残った。顔が笑ってしまうのを止めることができなかった。あのお金があれば、学校にも行けるし、ジェレミーの面倒も見られる。フロントガラスの雪を払い落しながら、僕は浮き立つような感覚に満たされていた。若いカップルがレストランに入っていき、焼き立てのパンのにおいがする暖かな空気の波を解き放った。その香りがそよ風に乗って流れてきて、僕のまわりで渦を巻く。僕は思わず手を止めて、カールが僕に語ったあることを思い出したーー天国はこの世にも存在しうる。
 僕は裸の手に雪をすくいとり、それがてのひらで解けていくのを見つめた。温かな肌にその冷たさを感じ、透明な薄片が水滴に変わって手首を伝うのを、やがて蒸発して別のものになるのを観察した。それから目を閉じて、風の歌に耳を傾けた。それは軽い唸りとともに近くの松の木立を吹き抜けていった。松葉の中に隠れたアメリカコガラたちのおしゃべりがその調べにアクセントをつけている。僕は十二月の寒気を吸い込んでじっと立ち、自分を取り巻く世界の感触、音、においを味わった。もしカール・アイヴァソンに出会わなかったら、見過ごしていたであろうすべてを。

芸術には不思議な力があります。ということは、人間には不思議な力があるということです。

  芸術の魅力が増すと信じてるコロナ禍のあと生きる力に

コロナ禍後の世界が楽しみです。

昨朝の梅雨空のパノラマでお別れします。DSC00610_1


今日の曲は、高橋優 現実という名の怪物と戦う者たち